意外と知られていないけど成長中、または今後成長の可能性が高い業界・マーケットをご紹介します。
今回は「シニアマーケット」について。転職を目指すあなたに、市場の動向をレポートします!
マーケットが拡大している新しい分野では、経験者が少なく人材不足ということもあり、狙い目です。業界未経験でもチャレンジできる可能性が高いというわけです。
しかし...
シニアマーケットに参入するも上手くいかず撤退という企業もあるといいます。現実は甘くないですね。なぜなのでしょうか。
高齢者市場はマーケティングが難しい?
シニア世代は確かに人口のボリュームゾーン。でも価値観や好みが多様化して大きな違いがあり、画一的には考えられません。シニアマーケットはマーケティングが最も難しいといわれるマーケットでもあるのです。
商品やサービスを効率良く販売するため、市場調査や広告宣伝、検証など各過程で戦略を立てていくマーケティングでは、ターゲティング(マーケットを細分化すること)が必要不可欠です。ターゲティングが不十分だと「誰が」「どのような」サービスや商品を求めているのかが曖昧なので、思うような結果につながりません。
そこで、シニアマーケットで活躍するためにも必要不可欠な知識「ターゲティング」を通して、シニアについてもう少し深く理解していきましょう。
高齢者をターゲティングして「シニアマーケット」をもっと知る
年齢、身体状態でターゲティングする
シニアのターゲティングには、年齢に伴う健康や身体状態を軸に分ける必要があります。これによって、「求めるもの」というよりも「求めることが可能なもの」が根本的に変わるからです。
アクティブシニア
シニア前期とも言える、5歳〜75歳。自分なりのこだわりや価値観を持ち、仕事や趣味などに意欲的に取り組んでいるシニア世代のこと。気力、体力共に充実していて、生活水準も高い。美容、健康、学び、おしゃれ、外食などさまざまなことに興味があり、意識も高い傾向があるので消費活動も活発。時間にも余裕がある。
ノンアクティブシニア
シニア中期とも言える、70歳以上。加齢に伴う健康や身体状態が気になりながらも、介護が必要という状態ではない。生活水準は余裕があるわけではないが、日常生活をつつましく送ることには支障がないというレベル。保守的で倹約志向が強いので、消費活動は控えめ。
パッシブシニア
シニアの中で介護保険受給者。シニア世代の20%弱である660万人がこの中に含まれる。80代後半になると介護サービスを受ける人の割合が半数以上になる。
シニアマーケットが難しいといわれるのは、このように年齢に伴う健康や身体状態が変化していくことと、生活水準の差異が根底にあるためです。
価値観でターゲティングする
年齢や身体状態、生活水準の差異に加えて、趣味嗜好や価値観の違いなども考慮する必要があります。
アクティブシニアの王道タイプ。リタイヤして時間とお金の余裕あり。人付き合いも広く、社交的。 身の丈リアリスト「理想と現実は違う。質素倹約が基本」お金を持っていないわけではないが、将来不安から消費は控えめ。人付き合いも控えめでマイペースに暮らしたいと考えるタイプ。
淡々コンサバ「穏やかな老後。平凡できちんとした暮らし」
保守的で伝統的な価値観を持つタイプ。現状に満足していて変化を好まない。多くの人が抱いている「シニア」のイメージがこのタイプ。
ラブ・マイライフ「自分らしく。一生魅力的でいたい」
アクティブシニアの新型で、特に刺激を好むタイプ。アンチエイジングや新しい事に興味があり、情報通。欲しいものは迷わず購入するタイプ。
社会派インディペンデント「自分らしく。知的好奇心に衰えはない」
アクティブシニアの新型で、特に学びと社会貢献に意欲的なタイプ。世代を超えた人との繋がりや人脈を大切にする。
セカンドライフモラトリアム「変わりたい。でもどうしたら良いのか分からない...」
社会に取り残される不安、人や社会と繋がりたいという願望なども持ちつつも、実行に移せていない。6つのタイプの中で、最も多い割合を占めると言いわれている。
上記のように価値観で6つのタイプに分けられていますが、そのタイプの要素が一番強いというだけで、誰もがさまざまなタイプの要素を持っていると考えられますから、絶対的な正解があるというわけではありません。
「シニア像」のイメージには誤解も多い
「高齢化社会に拍車がかかるなか、企業にとってシニア消費を取り込む重要性は高まるばかりだ。しかし、シニア層の攻略が一筋縄ではいかないのは定説。シニアビジネスで成功している企業の取り組みを見ると、ちまたでよくいわれるアクティブなシニア像に、実は誤解や思い込みがあることに気付かされた。」(2018年6月25日 日経MJ 流通新聞 001ページ掲載)
新聞でもシニアの実態をつかみ、求めるものを的確に導き出すことの難しさに触れられています。
社会的背景が価値観に反映される
価値観や好みが多様なシニア。でも、なんでもありというわけではなさそうです。
「スマートエイジング:「年を重ねることによる体の変化に賢く対処し、知的に成熟する」という超高齢社会の加齢観。このスマートエイジング志向の人たちは潜在的に60代の3割、70代の2割いる。実は50代は4割とかなり高い。(2019年3月27日 日経MJ 流通新聞 003ページ掲載)
さらに
「50代、40代という現役世代の方が今のシニア世代よりも(スマートエイジング志向の人の割合が)高いのは、平成の30年間で高齢社会が進んだことも理由のひとつだ。親世代の長い老後が「見える化」したことで、老後をイキイキと過ごすためにはどうすればいいのか、ということに関心が高まっている。」(2019年3月27日 日経MJ 流通新聞 003ページ掲載)
と書かれています。高齢社会という社会的背景があり、身近な人の老後を目の当たりにして模索している。そんな40代・50代「シニア予備軍」も含めた多くの人の姿が見えてきました。
経済力、体力、気力など、あらゆる面で「無理なく」、シニアライフを人生の一部としてより充実させたい。自分らしく生きていきたいという切実な想いが感じられます。
シニアマーケットの魅力とは?
シニアマーケットはビジネスチャンスと自分なりのやりがいが見つけられる、そんな可能性を秘めた業界。大切なことはシニアに寄り添い、深く理解しようとし続けること。そして、いかに切実なシニアのニーズをキャッチして誠実に応えていくか。より人生が豊かになるようなものを提案できるか。
表面的な「金儲け」では通用しない。ビジネスでありながら、人としての温かな「心」が求められるマーケットです。
これこそが、シニアマーケットの本質的な魅力といえるのではないでしょうか。