旅行先などで休暇を取りながらリモートワークをするのが「ワーケーション」。
コロナ禍の中で急に注目された感じもありますが、実は地方創生の有効な手段として数年前から各自治体で取り組みとしてワーケーション用オフィスの提供など、関連ビジネスが徐々に広がっていました。
そしてコロナ禍をきっかけに、リモートワークの普及にともなってワーケーションの導入についても検討する企業が増えると予想されます。観光需要の回復策として政府が推進していることからも、マーケットが本格的に立ち上がる可能性も。 まさに「これから」の市場だけに、異業種人材の多様な視点や経験が生かせるので、転職の観点からも要チェックです!
ワーケーション市場に注目する理由
ワーケーションは、旅行しながらリモートワークをするわけですが、企業がリゾート地にサテライトオフィスなどの拠点を設け、従業員が出張してリフレッシュできる環境で働けるようにする取り組みも含まれています。
ワーケーションという言葉は2000年代に米国で生まれたと言われていて、日本でも90年代頃から一部企業で従業員の創造性や生産性を高める狙いから取り組む例がありました。
現在はWeb会議システムやビジネスチャットツールなどのICT(情報通信技術)の活用により、場所や時間にとわられずに働ける可能性はさらに広がっています。
理由1 企業の注目度が高い
「従業員の心身の健康、創造性や生産性の向上が期待できる」としてワーケーションに注目している企業が増加しています。ワーケーションの効果に関して、まだデータは少ないですがNTTデータ経営研究所、JTB、日本航空が2020年6月に実施した実証実験では、以下のような結果が得られたとか。
・情動的な組織コミットメント(所属意識)を向上させる
・実施中から終了後5日間、仕事のパフォーマンスが参加前と比べて20%程度上がる
・心身のストレス反応の低減(参加前と比べて37%程度)と持続に効果がある
・活動量(運動量)の増加に効果がある(歩数が参加前と比べて2倍程度増加)
出典:NTTデータ経営研究所
働き方改革の一環として2019年4月から従業員に年5日の有給休暇を取得させることが企業に義務付けられています。「有給休暇の取得を促す人事からのメッセージを受け取って知った」という方も多いのではないでしょうか。これにより長期の連続休暇が取りやすくなることから、ワーケーションは有給休暇の取得促進策としても注目されているのです。
日本航空では2017年7月から休暇期間中にリモートワークでの業務を認めるワーケーションを導入し、同社の年次有給休暇の取得率は2016年度の85.5%から2017年度には89.5%に向上しています。
このように、働き方改革の一環としてワーケーションに注目している企業の存在は見逃せないポイントと言えるでしょう。
理由2 地方創生の有効な手段として期待されている
人口減に悩む自治体は、地域の消費増や経済効果につながるとしてワーケーションの受け皿作りに力を入れています。
早くから積極的に取り組む自治体の一つが和歌山県。同県白浜町の南紀白浜空港は2018年度には過去最高の搭乗客数となりましたが、ワーケーション関係者の利用の後押しがあったとみられています。
さらに2019年11月には和歌山県や長野県など65自治体が参加して「ワーケーション自治体協議会」が発足し、盛り上がりを見せています。
理由3 政府が推進している
ワーケーションは、現在「ポスト・コロナ」の目玉政策として政府が推進しています。2020年7月に首相官邸で観光戦略実行推進会議が開かれ、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ観光需要の回復に向けて会社員らが混雑期を外して休暇を取れる方策を検討しています。議長は当時官房長官であった菅義偉総理で、観光地やリゾート地など休暇先で働くワーケーションの普及に意欲を示しています。
環境省は全国34カ所の国立公園などでワーケーションを実現できるように環境整備するとのことで、今後に期待が集まっています。
- 編集部員
- コロナをきっかけに、場所にとらわれないワークスタイルが定着しつつあります。でも在宅でのテレワークは孤独になりがち。メンタルや体の不調を訴える人も増加しているそうです。そんな中、ワーケーションが注目されるのは納得できますね。
次は、ワーケーションに関わる業界・マーケットの動向や、転職の可能性を見ていきます。異業種転職でもチャンスあり、ですよ!