意外と知られていないけど成長中、または今後成長の可能性が高い業界・マーケットをご紹介します。
今回は「豊かさとは何か?」という価値観の多様化とともに注目を集めている「コト消費」について。転職を目指すあなたに、市場の動向をレポートします。 (※この記事は、2020年1月に執筆しています。)
「コト消費」とは?
「コト消費」とは、単に「モノ」の所有を求める消費ではなく、体験(=コト)を通じて得られる満足感や高揚感に価値を見出す消費傾向のことを言います。
コト消費が熱い理由〜なぜ推すのか?
ポイント1: モノ消費は減少傾向にある一方で、コト消費が注目され始めているから
日本国内では消費が成熟し必要なモノが行き渡っているため、モノへの欲求が弱まっています。人口減少で消費市場全体が縮小する中で、コト消費への期待は大きく、企業は対応に力を入れ始めているのです。
ポイント2: 「モノ消費×コト消費=業績up」という成功の法則が確立しているから
小売業界では、多様な商品やサービスをミックスしたり、空間・時間的に今までの「買い物」の概念を覆す取り組みが目立ちます。
ショッピングセンター
エステやネイルサロンといった美容施設、映画館やクッキングスクール、子ども向けの遊戯施設などサービス系のテナントを拡充する傾向があります。物販よりも「体験」を前面に打ち出したエンターテインメント性の高い商業施設に変化しています。
書店
生活雑貨や文具などの販売、体験型イベントの開催、カフェの併設など「コト消費」を取り込む店舗が相次いで登場しています。
ポイント3: インバウンド需要への期待
インバウンド客は、訪れた国ならではの旅行体験を求めるもの。リピーターほど、その傾向は強まります。
観光庁のデータによると、外国人観光客が「訪日前に最も期待していたこと」では、「ショッピング」や「日本食を食べる」といった従来型の消費は縮小傾向にあります。一方でスキーやスノーボード、温泉、自然や文化などの体験、いわゆる「地方型コト消費」が拡大しています。
コト消費への関心が高まる中で訪日客の訪問先も多様化しています。
訪問先を三大都市圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫)とそれ以外の地方部に分けた場合、地方部を訪れる訪日客の割合が年々高まっており、その人数も増えています。
インバウンドにおけるコト消費の広がりは、地域の雇用創出にもつながります。 コト消費の集客において必要不可欠なのが、マーケティングやITの知識です。そのため、地方の観光関連産業や地方自治体などでも、今後IT(情報技術)対応やマーケティング、マネジメントなどの業種で培った知見や経験が求められる場面が見込まれます。
ポイント4: コト消費を海外に展開する企業も増えているから
注目すべきは、日本のコト消費を海外に展開するという動きが活発化している事です。温泉や娯楽、飲食など日本での体験を母国でも楽しみたいという需要を見込み、中国や東南アジアに進出する企業が相次いでいます。
化粧品や日用品などのモノ消費と異なり、コト消費の海外進出は現地に店舗や施設を構える必要があります。施設運営に必要な分野の人材の需要が高まっていますから、異業種でのスキル・経験を活かせる可能性が高いと言えます。
- 販売・サービス職店舗・販売、旅行関連、宿泊関連など
- 企画・管理マーケティング・商品企画・広告宣伝など
- 技術職SEやWebエンジニアなど
- 専門職コンサルタントなど
- ほか営業職・クリエイター・クリエイティブ職など。
売り場の娯楽性を高める小売業への転職では、エンタメ・アミューズメント業界での経験や知識を活かせるでしょう。 一方、インバウンドのコト消費では、地域の個店や業界、行政などを幅広く結び付ける企画力・マネジメント力が求められます。
インバウンド客のコト消費のニーズは多様で、趣味やボランティアなどで得た意外な経験が役立つ可能性もあります。コト消費で海外進出する企業においては、国内外での法人営業やビジネスの立ち上げに精通している人材の需要も見込めます。コト消費関連企業全体として見ると、マーケティングや企画系の経験は転職の武器になるでしょう。
コロナ禍で、現在は状況の変化も見られます。しかし、「モノより体験」を求める価値観は今後も、さまざまな産業に変化をもたらすことになりそうです。