近年、注目を浴びている早期リタイアやFIRE（Financial Independence, Retire Early）は、経済的自立と早期退職を実現し、資産の運用益だけで生活を支えることを指します。

会社勤務のストレスから解放されるセミリタイアやFIREに、憧れを抱く人も多いのではないでしょうか。

早期リタイアやFIREを実現するためには、どれだけの貯蓄が必要なのかが気になりますよね。 また、早期リタイアで失敗しないためにはどんなことに気をつければよいのでしょうか。

この記事では、早期リタイアのメリットや、必要な資金について詳しく解説します。

早期リタイアが注目される背景とは

早期リタイアが注目される背景には、経済的、社会的、文化的な変化が深く関係しています。以下に、早期リタイアが注目される主な3つの理由を解説します。

過酷な労働環境によるストレス

競争が激しい社会や長時間労働、過密なスケジュールによって多くの労働者がストレスや疲労を抱えています。 精神的な負荷や身体的な疲労が蓄積すると健康リスクが高まり、生活の質が低下する可能性も高いです。

そのため自分の時間を大切にし、より満足できる人生を過ごすために早期リタイアが注目を集めています。

賃金の低下

早期リタイアが注目される理由のひとつは、賃金の低下が挙げられます。近年、経済のグローバル化やAIの進化により、一部の職種や産業では賃金が上がりづらくなっています。

そのため、収入や経済的な不安を感じている労働者も多いです。 給与が不十分な場合、将来の安定した生活を確保するためには、ほかの手段を模索する必要があります。

早期リタイアは労働者がみずからの資産を管理し、経済的自立を目指す方法のひとつとして注目されています。

ライフスタイルの多様化

人々の生活や価値観が多様化しているなかで、日本では物質的な成功よりも自由な時間や心の豊かさを大切にする人が増えています。仕事に縛られずに、自分の興味や趣味に時間を割くことが重視されているということです。

そのため、仕事よりも自分の好きなことや興味を追求することに焦点を当て、より充実した人生を追求するという意味でも早期リタイアは注目されています。

早期リタイアの種類

早期リタイアにはいくつかの種類があり、それぞれの目標やライフスタイルによって異なります。以下に、代表的な早期リタイアの種類を紹介します。

アーリーリタイア

アーリーリタイアは、通常の定年退職年齢よりも早く仕事を辞めて、リタイア生活を始めることです。 一般的には50代やそれ以下の若い年代の人がアーリーリタイアを目指すことが多く、早期に退職するためには十分な資産を築くことが必要です。

セミリタイア

セミリタイアは、完全にリタイアするわけではなく、一定の仕事や収入源を持ちながら、リタイア生活を送ることを指します。 セミリタイアのメリットは自分のペースで働きながら、余暇や趣味に時間を充てたり家族や友人との時間を大切にできることです。

FIRE

FIREは、「Financial Independence, Retire Early（財務的独立、早期退職）」の略称で、早期リタイアを実現するための手段のひとつです。 このライフスタイルでは経済的な自立を達成し、早期に仕事を辞めて自由な生活を送ることを目指します。

具体的な方法としては定期預金や株式投資、不動産投資などを通じた資産形成が挙げられます。

サイドFIRE

サイドFIREとは、本業やメインの収入源に加えて副業やサイドビジネスを通じて追加の収入を得ることで、財務的自立を目指すライフスタイルを指します。

完全なリタイアではなく、副業やサイドビジネスを通じて追加の収入を得ることで経済的な安定を確保し、より自由度の高い生活を送れるのが特徴です。

バリスタFIRE

バリスタFIREはFIREのいち形態であり、経済的自立をほぼ達成しつつもパートタイムやアルバイトなどの軽い仕事を続け、生活費をまかないながらリタイア生活を楽しむスタイルを指します。

この方法は簡単かつ軽い仕事を通じて生活レベルを維持しつつ、仕事と家庭や趣味のバランスを保てるのがメリットです。

早期リタイアのメリット

早期リタイアにはどのようなメリットがあるのでしょうか。早期リタイアを希望する目的は人によってさまざまですが、そのなかでも一般的なメリットを解説します。

自由な時間ができる

早期リタイアのメリットは、自由な時間を確保できることです。仕事に縛られず、自分の興味や趣味に没頭できたり、家族や友人との時間をより充実させられます。

また、仕事のストレスやプレッシャーから解放されることも大きなメリットです。これにより、自己成長や新たな挑戦に取り組むための時間が作れます。

ストレスから解放される

早期リタイアの利点のひとつは、長時間労働やストレスの多い職場から解放されることです。仕事に追われることなく、自分のペースで生活することで、ストレスレベルが低下します。

特に職場の人間関係に悩んでいる人は、ストレスから解放されることで精神的な健康を維持しやすくなり、心身の健康によい影響を与えられるでしょう。

自己実現できる

早期リタイアのメリットのひとつは、経済的安定が得られることから自由な時間を確保できることです。これにより自己成長や人生の目標を達成する機会が増え、自己実現を叶えやすくなります。

仕事に追われることなく興味のあることに集中し、新たな趣味やスキルを磨く時間を持てるのがメリット。経済的に安定しているため、リスクを恐れずに新たな挑戦に取り組めるでしょう。

早期リタイアのデメリット

早期リタイアには多くのメリットがあるように感じますが、実はデメリットも存在します。準備を怠ると、以下のような問題に直面するリスクがあるので注意が必要です。

経済的な不安を感じる

早期リタイアの形態によっては収入が途絶えるため、資産が減少したり経済的な不安を感じる恐れがあります。 たとえば、サイドFIREなどで収入を得ていても予期せぬ支出が生じると生活が困難になることがあります。

早期リタイアを計画する際は、予期せぬ出費にも備えておくことが大切です。

健康保険や年金の受給額が減る

早期リタイアのデメリットとして、健康保険や年金の受給額が減少することが挙げられます。社会保険や厚生年金は一定の年齢に達してから受け取るのが一般的です。

そのため、早期リタイアを選択すると受給額が低くなる可能性があります。特に社会保険制度に加入している場合、退職後の自己負担が増えることも考えられるので注意が必要です。

社会的信用を失う

早期リタイアを選択することは、仕事を辞めて無職になることです。無職になると、社会的信用が低下し、ローンやクレジットカードの取得が難しくなる可能性があります。

また、バリスタFIREなどでパートやアルバイトをする場合も、社会的信用は一般の社会人よりも低くなる傾向があります。社会的信用を維持するためには、サイドFIREなどで個人事業主として活動することもひとつの選択肢です。

早期リタイアに必要な生活資金は？

早期リタイアに必要な資金はどのくらいでしょうか。 総務省の「家計調査報告」（令和5年発表）によると、2023年の2人以上の世帯（平均世帯人員2.90人、世帯主の平均年齢60.2歳）の1ヶ月あたりの平均消費支出は293,997円です。

これを1人当たりで換算すると約14.7万円（税金などを除く）となり、月15万円（年間180万円）の支出と考えられます。日本人の平均寿命を85歳とした場合、年齢別に必要な資金は以下の通りです。

▼30歳～35歳でリタイアする場合

• 30歳～85歳の生活費：9,900万円
• 35歳～85歳の生活費：9,000万円

▼40歳～45歳でリタイアする場合

• 40歳～85歳の生活費：8,100万円
• 45歳～85歳の生活費：7,200万円

▼50歳～55歳でリタイアする場合

• 50歳～85歳の生活費：6,300万円
• 55歳～85歳の生活費：5,400万円

これらの金額はあくまでも最低生活費であり、実際には保険料や年金代なども考慮に入れる必要があります。それぞれの年齢に応じた追加費用を合わせて計算すると、必要な資金をより正確に見積もれるでしょう。

早期リタイアで失敗しないためのポイント

早期リタイアには失敗するケースはいくつかありますが、特に多いのは生活費が予想よりも多くかかり、資金不足に陥ることです。

また、早期リタイアに失敗して再就職を希望しても、年齢が高くなると仕事が見つかりにくくなります。ここでは、早期リタイアで失敗しないためのポイントを解説します。

資金を把握する

早期リタイア後の資金不足で失敗しないためには、リタイア後にかかる必要な資金を正確に把握することです。現在の生活費をベースに、住居費、食費、医療費、年金、保険料、交際費などを考慮して計算しましょう。

インフレや将来の物価上昇、予期せぬ支出に備え、余裕を持った予備費を設定しておくと安心です。リタイア後も安定した収入を得るために、複数の資産運用方法を検討しましょう。

多様な収入源を確保する

早期リタイアを成功させるためには、多様な収入源の確保も大切です。資産運用は早期リタイア後の主な収入源となります。例として、不動産投資を行うことで安定した家賃収入を得やすいです。

さらに、自分のスキルや経験を活かして副業やフリーランスとして働くことで、収入を確保するのもひとつの方法です。

明確な目標と計画を設定する

早期リタイアを成功させるためには、明確な目標と計画を立てることが不可欠です。まず、リタイア後にどのような生活を送りたいのか具体的な目的を設定しましょう。

目標が明確になったら、生活費の見積もり、資産運用戦略、不動産収入、副業・フリーランスの検討、年金や社会保障の確認など、多方面からのアプローチを取り入れて計画を立てます。定期的に計画を見直すことで、失敗のリスクを抑えられるでしょう。

専門家のアドバイスを受ける

早期リタイアで失敗しないためには、専門家のアドバイスを受けることもひとつの手段です。専門家としては、ファイナンシャルプランナーや弁護士、医療専門家、不動産エージェント、社会保険労務士などが挙げられます。

各分野の専門家の助言を得ることでより具体的な計画を立てられ、失敗のリスクを最小限に抑えられるでしょう。

早期退職可能な企業へ転職する

早期リタイアを実現するためには、早期退職が可能な企業への転職が近道です。早期リタイアには会社の承認が必要であり、退職できない場合は早期リタイアを実行できなくなる可能性があります。

早期退職ができる企業では、退職金やリタイアプラン、ワークライフバランスを重視している傾向があります。企業の公式Webサイトや求人情報、社員や元社員の声を参考にしてみるのもよいでしょう。

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早期リタイアを叶えるためには念入りな準備が必要

早期リタイアを実現するには、急な決断だけでは難しい場合があります。リタイア後の資産形成や運用、さらには会社との調整など、さまざまな準備が必要です。

将来的に早期リタイアを考えているのであれば資金計画を入念に立てるだけでなく、早期リタイアがしやすい企業への転職も視野に入れるべきでしょう。 今から着実に準備を進めていくことが、理想のリタイア生活を実現するための近道です。

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